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見学及び講演内容 |
<上記の写真はHP、会社案内から掲載> |
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A;工場見学―工機・熱交・油機・メディカルの4事業部を夫々約15分、各事業部のご担当者から説明を受け見学させて頂いた。 |
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【工機事業部】 |
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- 工機事業部で生産・販売する工作機械は、基本的に客先ニーズに特化したブロックビルド方式による自動化専用工作機械であるが、その他多軸加工機や深穴加工機、高精度ボーリングやラインボー
リング機、フェーシング加工機、高速U軸機等高効率で汎用性のある工作機械を生産されている。
- 同社の特徴ある技術として、二重偏芯式高速U軸センター(特許)がある。旋削が出来ないワークや遠心力で歪が出るようなワークの加工の場合、工具回転で加工しなければならない場合がある。この場合加工形状によって工具の径方向の移動(U軸制御)による加工が不可欠な場合がある。近年刃具の進歩により素材によっては1,000m/minを超える切削速度で加工する場合もあり、こんな場合では主軸の回転数が5,000rpmにも達する。
工具を径方向に移動しアンバランス質量が発生すると、その遠心力で精度剛性が保たれなくなる。
同社の二重偏芯式では工具軸は旋回せずに第一偏芯軸と第二偏芯軸が互いに逆方向に旋回することにより工具軸が偏芯量の4倍の距離を直線移動するものであり、各軸間の動バランスを取って、しかもそれらの重心平面を一致させておけば重心が一切移動せず、遠心力の影響を受けないものである。(現物のデモで説明を受ける。但し安全のため回転数は落としてあった。)
- 最近開発された、鋼板R面取り加工機が好評を得ているとのことであった。
これは船舶国際ルール、PSPC規制により面取り部分は「2R」と明確化され、現在以上の塗装の均一化が要求されることから、需要が高まっていることによる。
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【熱交事業部】 |
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- シェルアンドチューブ式の熱交換器で、用途は冷却・加熱・凝縮である。 同社での販売先は80%が船舶用で、残りが陸用であるとのこと。
- 船舶用の場合の冷却媒体は海水となるので、チューブ、管板等にはそれに耐える材質が採用されている。
- チューブと管板の接合部は、2MPa以下の低圧のものは、特殊工具で管端を拡張(エキスパンド)し圧接する方法を採用されている。高圧のものでは溶接をする。
- 熱交換効率を高めるため、チューブ表面に転造で螺旋フィンを形成し表面積を増して、装置の小型化を図っている。
- 熱交事業部では熱交換器以外に、船舶用に燃料のC重油とマリン・ガス・オイルとの混合比率を自動調整する自動燃料調整装置も商品化されている。
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【油機事業部】 |
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- 油機事業部では、船舶用ディーゼルエンジンのシリンダとピストンリングの間に潤滑油を供給する注油器を始め、潤滑油やグリースを供給するポンプを生産されている。その構造は定量プランジャーポンプである。
- 潤滑油の使用量を節減するため、ノズル部の形状に工夫を加え横方向に拡散したり、新製品として電磁式タイミング注油器が商品化されている。 これは、従来エンジンの回転から給油機ポンプの駆動をするのではなく、ソレノイドを駆動源とし例えばエンジンピストンの2~3ストロークに1回給油するようなきめ細かい電子制御が可能となるものである。
- 油機事業部では、注油器以外に可傾式バレル研磨機や、船舶エンジンの排気弁棒・弁座の研磨機も生産されている。
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【メディカル事業部】 |
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- 産学官連携により9年前から研究に着手し、2009年に事業部を発足させ、2011年にISOクラス7のクリーンルームを開所し、ヤセック吸引嘴管(しかん)
の製造を開始した新規事業である。
- ヤセック吸引嘴管は外科手術の折、臓器から出血や体液が分泌したときそれらを吸引する際使用される器具である。同社の特徴はパイプの先端に径0.2mmの毛が多数集まったハケがついていることである。このハケが臓器表面に吸引跡が付くとか、臓器を損傷することを防いでいることである。
- 内視鏡手術の際、患部に洗浄液や染色液を噴射したり、また、それらの液を吸引するカテーテルも開発され商品化されようとしている。(洗浄吸引カテーテル・・・エンドシャワー)
この先端部は直径0.4mmの微細口径の穴が24個明けられているが、バリの影響を避けるためインジェクション成形で生産されている。
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B;代表取締役社長 兼 CEO 大日 常男氏の講演 |
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「世界の中の日本、これからの日本に必要な学生とは」~~私が現代の若者に伝えたい事~~との演題で、これから職を得て職に就かんとしている学生諸君に対し、大日社長の人生経験や経営責任者としてリーダーシップを発揮して企業を、社員を牽引してこられた中で感じてこられたことで若者に伝えたい事をお話しされた。 纏めとしては、以下の通り。
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- 目的と目標を明確にすること。
![講演の大日社長](photo/130704y10_10.jpg) <講演の大日社長> |
目的とは、追求すべき精神的・質的なもの。形ではない。
目標とは、目的を達成するために設けた的、物質的・数量的に見え るもの。
目的と目標の違いを確認して判断の基とすること。
- 自分の将来像に向かって、強い意志を持つこと。
道に迷った時、先が見えない時、自分にとって厳しい道を選ぶこと。
- 日本の若者は世界のリーダーとなるべく倫理観、道徳観を鍛錬し、クリ エイト・創造力と人間性を高めること。
日本人としての誇りと自信を持つこと。
礼儀正しさは日本人の誇りであったハズ。
これからの日本はどんな仕事でも、人の和、共創、オールハイテクジャパンで成功を得る。
ただし強力なリーダーの元。
人が好き、人と交わることが好きな人間になれ。人の和は会話が基本である。
リーダーとは先のイメージ・想像出来る能力、そしてそこから未来をクリエイト・創造出来る能力が必要 である。 と締めくくられた。
含蓄に富むお話を聞き学生諸君は、これから立ち向かう人生に貴重な道標を得たことと思います。
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所 見 |
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- 山科精器(株)を訪問し、会議室に案内される間にお会いした社員の方々から「こんにちは」「いらっしゃいませ」と気持ちの良い挨拶をされた。大日社長が講演の中でお話しされていた人の和の基本は会話である、礼儀正しさは日本人の誇りであったはずというお考えが実践として社内に根付いて素晴らしい社風を形成していることに感心しました。意識有る行動の継続が習慣になると言うが、まさにそれレベルまで達しておられると感じた。
- 山科精器(株)は“私たちは先進の技術で広く人類の発展に貢献します”という経営理念を掲げられている。やがて操業75年を迎えられようという歴史のある会社であるが、常に新技術の開発に注力され、その製品にキラリ光る独自性を発揮されている。その根底には、ユーザーと密にコミュニケーションを取り真のニーズを正しく把握されていることがあるのではと感じた。
- 今まで会社が蓄積してきた生産設備や販売ルートから離れた医療機器という新分野に進出されている。産学官連携がキーワードとは言いながら、投資を回収するまでの期間が長い、当然リスクも伴う。新分野への進出には勇気ある経営判断を必要とするが、まさに大日社長のリーダーシップが発揮された事業であろうと感じた。更なる発展・成功を祈念いたします。
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