報告:藤浪 市郎(M40年卒)
髙橋金属株式会社(本社工場A・B棟)
髙橋金属株式会社(本社工場C棟)
今年度は、長浜市にある『私達の成長で世の中が良くなる会社に』を経営スローガンに掲げ、主に部品加工事業、環境商品事業を展開されている髙橋金属株式会社様を訪問・見学させて頂きました。
尚、同社の髙橋会長は滋賀県立大学工学部の旧支援会の会長を務められ、また、県短・県大のOBが14名も在籍されている、県大に縁の深い企業でもあります。
昨年に引き続き滋賀県立大学工学部機械システム工学科3回生の学生諸君のカリキュラムとしての工場見学の扱いでもあったため見学者が63名の大勢でした。多人数での訪問でありましたが、事前の計画・準備が周到になされ3グループに分かれて効率的な見学が出来ました。
髙橋金属㈱様のスタッフの皆様に感謝申し上げます。
◆日 時: 2017年7月 6日(木) 14:00~17:00
◆場 所: 髙橋金属株式会社(〒526-0105 滋賀県長浜市細江町864-4)
◆参加者: (敬称略)
・滋賀県立大学 工学部 機械システム工学科 3回生学生 49名
・滋賀県立大学 工学部 教員: 安田教授、栗本助教 2名
・湖風会:植田儀一郎(副会長)、伊垣 剛(就職支援) 2名
・「工学部学友会」:立入、国領、奥、藤田、内片、山添
長谷、若林、竹崎、藤浪 以上 63名
会社概要
● 商 号: 髙橋金属株式会社 TAKAHASHI METAL INDUSTRIES CO.,LTD.
http://www.takahasi-k.co.jp/
● 設 立:1958年10月
● 資本金:9832.5万円
● 所在地:〒526-0105 滋賀県長浜市細江町864-4
● 事業所:本社、技術営業課、環境商品営業課、中部営業所
中国工場(蘇州市)、タイ工場(Takahashi Metal Industries(Thailand)Co.,Ltd)
● 年 商:単体76億円(グループ105億円)
● 社員数:単体265名 (グループ約600名)
● 業務内容:精密金属プレス・精密板金・金属パイプ部品製造、プレス金型設計・製作、洗浄装置の開発・製造 他
見学プログラム
見学は、髙橋金属㈱ 取締役総務部長 森川 泰裕様の司会で、下記次第で進行された。
- 髙橋金属㈱ 常務取締役 山田 徳太郎様の挨拶(要旨)
常務取締役 山田様の挨拶
当社は、ものづくりの企業として「技術立社」を合言葉に60年の歴史を積み重ね、更に未来に続く100年企業としての礎を固めるために、他社に負けない強みとしての技術力を構築していかなければならないと考えており、そのためには人間(社員)の力が必要と考える。
働きやすい環境が育むやる気と創造力を人財力として生かし育てるための方針展開ならびに組織運営が我々経営陣の役割と認識している。
今期は、水陸両用バスの開発・生産に取り組み、その中で構築される新たな技術を育て、観光面のみでなく水難救助の方面でその技術を生かしていきたいと壮大な夢を持っている。
最後に夢多き若人にガンジーの次の言葉を送ります。
「あなたの夢は何か、あなたが目的とするものは何か、それさえしっかり持っているならば、必ずや道は開かれるだろう。」
- 湖風会「工学部学友会」会長 立入 勘一の挨拶(要旨)
立入会長の挨拶
本日の企業見学の機会を頂いた髙橋金属㈱様に感謝申します。
同窓会の県大工学部の活動支援ということで、このような見学会を何年も続けてきました。机上の勉強も大事ですが「百聞は一見に如かず」という様にものづくりの現場を、現物を、現実を見るとことが明日の糧になると思います。しっかり見学していただき有意義な時間にしてもらいたい。
- 髙橋金属㈱の紹介ビデオ
びわ湖放送の「滋賀経済NOW」中で紹介された髙橋金属㈱のビデオが放映された。
- 「技術開発型企業の現状」について
執行役員 技術開発部長 西村 清司様(県短S50M卒)の概要説明
技術開発部長西村様の会社概要説明
OBとして実務に40年携わった経験から現役学生への薫陶を交え、髙橋金属㈱の技術開発の姿勢、主な製品やその特長などを説明された。
その中で、特に「感性」を大切に、何をするにしてもその人なりの感性が問われてくる。美しいものをみて感性を磨くことも大事と思う、と話された。
●学生諸君へのアドバイスとして
・友達付き合いを大切に、特に大学時代の友は一生の友になる。
・益々グローバル化するこれからの社会で英語は必須と心得よ。
・99%の汗をかけ、そして1%のひらめきを入れよ。
●たまたま山田常務と一緒になったが、私からもガンジーの次の言葉を送ります。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。」
- 工場見学
3班に分かれてプレス加工、板金加工、パイプ加工、溶接等の部品加工の工程及び環境商品の洗浄機製造の工程等を見学した。
1)部品加工の主な工程の概要
- プレス加工工程
板鍛造品 →→→ ネジ鍛造品
150t~500tまでの順送ラインとトランスファーマシンを中心に省力化と無人化に取り組み、様々なニーズに対応が可能な生産システムが構築されていた。
中でも特徴としては、
①型内ネジ転造加工技術で、複雑三次元形状部品加工と同時に機械加工レスにて転造ねじを高精度にプレスのワンストロークで完結した一貫生産システムが構築されていた。ねじ転造加工領域はM20〜M50まで対応可能である。
プレス加工のみで鏡面成形した部品
②鏡面プレス加工技術で、プレス成形のみで鏡面加工を実現した生産システムが構築されていた。自社製品の電解イオン水洗浄システムを使いメッキレスで鏡面性能の維持が可能で、反射鏡部の表面粗さSa0.02μm以下である。
また、プレス金型は自社で製作及びメンテナンスもされている。
- 板金加工工程
基本的に多品種少量生産、短納期に対応している。比較的数量の多いものは、ハンドリングロボットを導入し、無人運転(24時間対応可)を行っていた。
- パイプ加工工程
Φ5~Φ115の各種材料のパイプの切断・曲げ・溶接・洗浄・検査までの一貫生産ラインが構築されていた。洗浄には自社開発の電解イオン水洗浄システムが組み込まれ、塩酸などの薬品を使用せず、洗浄液の油水分離性が高く、クローズド化によるゼロ・エミッション対応が可能となっている。 - 溶接工程
ファイバーレーザ溶接加工システム
一般鋼材・メッキ鋼板・SUSなどの各種材料に対し、CO2・TIG・YAG・ロー付け・スポット溶接などの接合に対応が可能となっている。特に、中小ものづくり高度化法に基づく認定支援(サポイン等)により開発された「ファイバーレーザー溶接加工技術」は、波長1.07μmのレーザーを使用、溶け込みが深く、集光密度が高く熱ひずみが少ない高品質の溶接ができる。巣が無く水密性が高く真空容器の生産に適用されている。
2)環境商品(洗浄装置、付帯設備の電解イオン生成装置等)の製造工程の概要
洗浄装置、標準タイプから専用設計も可
開発設計から部品加工(プレス、板金、パイプ等)の内製化、組立、調整、検査までの一貫生産体制が確立されていた。
この洗浄装置は下請け体質からの脱却を目指し、自社製品として開発に努力された結果として生まれた事業である。「洗浄」という分野に着目し、従来の様に薬品を使用するのでは無く、水道水を電解イオン分解し洗浄液として使用する。薬品を使わないので油水分離性が高くクローズド化によるゼロ・エミッション対応が可能となるものである。 累計3000台の実績がある。
- 県大OBによる業務紹介、卒業生との座談会・質疑応答
県短・県大OBを代表して、県大卒の下記3名の方が、現状の業務内容、業務を通じての所見等を述べられた。いづれの諸氏も15年程度の実務経験者である。
●環境賞品事業部 環境商品製造課 課長 小川 陽助様(3期生)
県短・県大OBを代表の皆さん
洗浄機の製造を担当。お客様に納品する製品がいくら精度よく仕上がっていても、汚れていればOUTであ る。 今まで営業を担当しており、この4月から製造管理に代わった。
●プレス事業部 プレス課 工機課 課長 世継 武志様(3期生)
プレスの生産ライン、金型の製作、設計といろいろ経験し今は管理の方の仕事をしている。当社では一人の仕事の範囲が広い、逆に自分がこういう仕事をしたいと思えばやらせてもらえるし、仕事をやる上で良い環境かなと思う。
●生産技術部 生産技術課 主任 上林 守様(2期生)
設計がやりたくて設計ができるということで入社したが、加工のことがよく判っていなくて悩んだ。当時の専務に相談して加工のことがもっと知りたいと希望して、生産技術に移動した。現場の方に叱咤激励されながら幅広い技術を学んできた。色んな経験が出来てやりがいがある。
- 髙橋金属㈱のリクルート情報の紹介
担当者から「会社概要」「就活に関する情報」などのリクルートの紹介、学生諸君から質問もあった。
- 「工学部学友会」奥副会長のお礼の挨拶(要旨)
奥副会長のお礼の挨拶
①「技術立社」を合言葉に常に新しい技術を開発し、更に未来につながる100年企業を目指し、髙橋社長を中心に 全社一丸となって邁進しておられる活気を、工場のあちらこちらで感じられる一日であった。
他社に負けない技術力を目指され、それらが、型内ネジ転造加工技術、鏡面プレス加工技術、またはファイバーレーザー溶接加工技術となって実績になっている。
②創業時の板金加工から出発され、下請体質から脱却するため自社製品の研究開発に注力され、それが 電解イオン 水洗浄装置として結実された。薬品を使わない洗浄装置、システムでクローズド化によるゼロ・エミッションを実現させるという、まさに時勢にマッチした商品を生み出された。
③価値創造のための技術構築の戦略も、大学などの研究機関とのタイアップ、関連企業との提携、得意先からのニ ーズ情報の入手、または、国の研究開発支援補助策(サポイン等)の活用等、時間短縮・完成度のアップ・リスク の低減などに配慮され、感心した。
④新しいこともあるが、工場内がきれいで、整理整頓が行き届き、また工場内で従業員の方と目が合うと笑顔で軽く会釈がかえってきて、非常に好感度をもった。
以上、一度に大人数で押しかけたにも関わらす、事前に綿密な計画を立てていただき、効率的に説明や見学を受けられたことに改めて感謝申しあげます。有難うございました。 以上